2014年3月に、本センターを発行者として、「同志社コリア研究叢書」を立ち上げました。
冊子で刊行するとともに、同志社大学学術リポジトリを通じても読めるようにします。
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- ■同志社コリア研究叢書1
- 鄭昞旭・板垣竜太編『日記が語る近代:韓国・日本・ドイツの共同研究』(2014年3月)
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- ■同志社コリア研究叢書2
- 板垣竜太・コ ヨンジン編『北に渡った言語学者・金壽卿(キム・スギョン)の再照明』(2015年1月)
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- ■同志社コリア研究叢書3
- 板垣竜太・鄭昞旭編『日記からみた東アジアの冷戦』(2017年3月)
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- ■同志社コリア研究叢書4
- 太田修編『植民地主義、冷戦から考える日韓関係』(2021年3月)
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■同志社コリア研究叢書5
- 鈴木武 編訳(原口剛・森田和樹・板垣竜太 編・解説)『翻訳と連帯:ある寄せ場労働者の「抗日パルチザン参加者たちの回想記」翻訳の軌跡』(2023年3月)
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同志社コリア研究叢書創刊に寄せて
同志社大学にコリア研究センター(Doshisha Center for Korean Studies、略称「DOCKS」)が設置されたのは2011年1月のことである。その前身として、同志社朝鮮半島研究ネットワーク(Doshisha Korean Studies Network、略称「DOKOS-net」)が2005年から結成されていたが、それを発展解消してできあがったのがコリア研究センターであった。センター発足以来、活発に研究活動を展開してきたが、なかでもここに明記しておきたいのは京都コリア学コンソーシアム(Kyoto Consortium for Korean Studies)の発足である。これは同志社大学、立命館大学、京都大学、佛教大学にあるコリア研究の拠点を結び、研究の活性化や若手育成など共通の目的のために協力しあう枠組である。2011年から研究会の開催などの準備をはじめ、2012年4月に正式発足した。DOCKS は現在その事務局を担っている。
本叢書は、同志社コリア研究センターを出版者として、3・1独立運動から95周年にあたる2014年3月に創刊するものである。本叢書は原則として紙媒体と電子媒体の両方で発行する。紙媒体の方は ISBN コードをつけるが、少数部のみ印刷し、流通業者や書店を通さないで頒布する。電子媒体の方は、同志社大学学術リポジトリ(http://library.doshisha.ac.jp/ir/)を通じてダウンロードできるようにする。以下、このような形態で叢書を立ち上げた背景と趣旨について述べておきたい。
まず、何よりも今日の学術出版の置かれた困難さが大きな背景としてある。当初、叢書の第1集となる『日記が語る近代』を商業出版社から刊行することを模索していた。だが、どの出版社からも伝えられたのは出版事情の厳しさであり、なかでも専門的な学術論文集の発行に対する消極的姿勢であった。出版社に助成金を出すか、できあがった本を大量に買い取るかしない限り出版は難しかった。
仮にそうやって出せたとしても、価格は高くならざるを得ないのが普通である。学生に授業やレポートのために購入するよう求めるのも憚られ、内容に関心のある読者も手が届かないというものになっては、何のために出すのかという思いにもなる。苦労して出版しても、その本が届くべきところに届かないということが起きているのが現状である。
それに加え、タブレットの普及とともに研究者の間でも論文や資料などを電子媒体で読むことが急速に拡大しているが、そのニーズに比べて日本の電子書籍市場は低調であるといわざるを得ない。信頼のおける研究をインターネット上に確実に流通させることは、現代の研究者としての責務でもある。
さらにいえば、少し苦言めいてしまうが、昨今の学術出版における編集者が、批評眼をもった共同製作者という役割から後退したケースが増えているということも背景にある。校閲が十分でない出版物もよく見かける。本づくりの根幹である編集・校閲と、できあがった本の販売とが出版社に期待される2つの大きな役割だとすれば、少なくとも学術出版においては、その両者が揺らいでいるように見える。
他方、著者が研究者の場合、出版することの第一の意義は、研究成果を体裁の整った形にして必要な人が参照できるような状態にすることにある。研究者は、関心のある人に読んでもらうために書くのであって、入手の難しい本となることは望んでいない。英語の “publish”(出版する)の語源は「パブリックなものにする」という意味である。今日のメディア環境のなかで「パブリックなものにする」とはどのようなことなのか、原点に立ち返って考えるべきである。
そうした背景から、大学の研究センター自らが編集機能をもった「出版者(publisher)」(「出版社」ではない)となって、紙媒体と電子媒体の両方でパブリッシュすることを決断したのである。同志社コリア研究叢書として刊行するものは、単なるワーキングペーパーや報告書、あるいは紀要ではなく、学術的な専門書である。専門知識を有する研究センターのメンバーが編集者・校閲者となり、学術論文集の組版経験のある印刷所で製作するので、品質的には全く問題ない。装幀をデザイナーに依頼して一般的な専門書よりも綺麗にデザインするなど、より好きなかたちで本づくりもできる。少数しか刷らなくても、ウェブを通じていつでも誰でも無料で参照できる。書店流通しないデメリットを補うメリットが十分にある。もちろん商業出版と競い合うつもりは全くなく、特性を活かしながら、うまく棲み分けができればと考えている。
本叢書が、コリア研究の一層の発展に寄与することを切に望む。
2014年2月
同志社コリア研究センター
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