同志社コリア研究センター

共同研究

コリア研究センターと高麗大学校民族文化研究院とのあいだで進めている国際共同研究「朝鮮半島と日本を越境する植民地主義および冷戦の文化」が、学振「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」(2013~2015年度)に採択されました。
以下、その概要を説明します。

 

1/7 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム(2013年度)
事業名:朝鮮半島と日本を越境する植民地主義および冷戦の文化

 

2/7 事業主体と相手側研究機関の概要

■本計画の事業主体は同志社大学のコリア研究センターです。本学に所属するコリア学の研究者が集まり、2011年に発足しました。京都地域の、さらには日本のコリア学の、文字どおり「中心」となるべく活動しています。
■共同研究の相手側研究機関は、韓国のトップ大学の一つ、高麗大学校の民族文化研究院です。韓国を代表するコリア学研究機関の一つです。韓国内外での知名度の高さや、充実した研究インフラに加え、近現代朝鮮半島の文化研究を推進するための人材という面でも本事業に最適のパートナーです。
■大学間および研究組織間の交流協定は既に締結され、実際に交流が進んでいます。

 

3/7 国際共同研究課題の枠組
■近現代の朝鮮半島の文化は一国主義的な観点では捉えきれません。20世紀前半は日本による植民地支配によって、深い影響を被りました。20世紀後半は冷戦の影響を深く被り、南北分断が今日まで継続しています。
■本共同研究が注目するのは、そうした20世紀の朝鮮半島と日本の関係のなかで形成された文化です。植民地主義や冷戦のようなグローバルな力が作用するなかで、文化も一国的に完結することなく、いわば越境してきました。本共同研究は、そうした越境する文化を、具体的に掘り起こしていきます。
■本共同研究のキーワードは植民地主義と冷戦ですが、それを、国対国の外交関係としてのみとらえるのではなく、人々の経験や記憶を含む「文化」のなかに探っていく点が大きな特色となります。

 

4/7 国際共同研究の計画
■既に高麗大学との間には国際共同研究を実施しており、その第1ステージが本年8月に終了しました。本年9月に始まる第2ステージは、その実績を踏まえ、第1ステージの延長線上の発展型として本事業をその中心に位置づけます。
■具体的に説明します。第1ステージでは、よりフォーカスの絞られた具体的な共同研究とするため、「個人の伝統と近代」および「植民地研究の最前線」という2つのプロジェクトを企画し、有機的に結合させながら同時進行してきました。
■プロジェクト1「個人の伝統と近代」は、日記などの個人記録を中心的な資料とし、個人の経験という観点から近現代史を捉え返す共同研究です。第2ステージでは、第1ステージの成果を踏まえ、資料や時代の幅を拡大しながら、あらためて個人記録の収集と検討を進めます。その上で国際学術会議を開催し、学術書を刊行します。
■もう一つのプロジェクト2は、ソウルと京都を相互訪問しながら濃密な対話をおこなうワークショップです。第1ステージでは「植民地研究の最前線」と題したワークショップを開催しましたが、第2ステージは時代がくだり、「冷戦研究の最前線」として新たにワークショップのシリーズを進めます。
■このように、既に国際共同研究の経験があり、また学術的成果もあげてきたことが、本共同研究の実現可能性・妥当性を高めています。

 

5/7 派遣計画の具体性・妥当性
■事業期間中に3名の若手研究者を派遣することを計画しています。
■まず若手研究者は、研究分野の適切性、語学能力等、6つの基準で選抜します。
■3名の若手研究者は高麗大学校民族文化研究院に、研究教員または研究員として、1年ないし2年間所属します。その間、それぞれが取り組む研究課題は資料のとおりです。また若手研究者はプロジェクト1・2の一方または両方に参加します。
■そのことによって「頭脳循環の加速」を促しますが、その具体的なイメージは、次のスライドを参照ください。

 

6/7 国際的な知的ネットワークの構築
■若手研究者は、日韓のあいだの歴史研究と対話の最前線に身を置くことで、研究者として得がたい経験と知的ネットワークを形成します。また、国際会議の運営の経験も積みます。そのことで、研究力と組織力を併せもった、国際的に活躍する人材として育つことになります。ひいては、東アジアの未来にとって重要な知的ネットワークの一員として活躍することを目指しています。

 

7/7 国際共同研究の成果と意義
■本国際共同研究は、「地域・時代・分野を横断した研究の展開」を通じて、「国内外のコリア学ネットワーク」を進展させ、ひいては東アジアの国際的な課題解決の一助となることを目指しています。
■日本と南北朝鮮を越境する文化を探求する本研究は、国民国家を単位としがちな従来の研究を積極的に乗り越えます。また、時代や分野に専門分化したタコツボ型の研究を横断します。その研究成果を専門家や社会に発信していくことで、従来の学問のあり方に一石を投じます。
■そうした共同研究を通じて、国内外のコリア学のネットワークを進展させます。国内の研究ネットワークで注目していただきたいのは、昨年、発足した「京都コリア学コンソーシアム」です。これは京都市内4大学のコリア学関連組織のネットワークで、本学が事務局を担っています。日本のコリア学の一大拠点となるべく、定例研究会や各種の学術会議の開催などを盛んにおこなっています。この国内ネットワークと国際ネットワークとを合わせて進展させていきます。
■いま、日韓のあいだでは、歴史認識をめぐる葛藤の解決が深刻な現代的課題となっています。植民地主義と冷戦をキーワードとする本国際共同研究は、東アジアの歴史葛藤を解決するために必要な知的ネットワーク形成の一助になることを目指しています。